コンサルの先生がケーキの箱?
今回ご紹介をさせていただくのはローチーフーズカンパニー様が運営する鶏肉加工品、お持ち帰り専門店で使用されるテイクアウト用のパッケージです。
お付き合いのあるコンサルの佐原先生(佐原経営支援パートナー)からの連絡だった。
「富田さんのところでケーキ箱できますか?」
「もちろんですよ。サイズいろいろありますけど・・・・先生、ケーキ作るの?」
「私じゃなくて、私のコンサル先の鶏肉加工工場でテイクアウト用に使うんだけど、詳しいことは直接聞いて!」
ご紹介いただいた先のローチーフーズ様に連絡を入れ、お邪魔することに。
お店の名前も良く知っていた。なぜなら、長いこと工事をやってた道沿いにあって、拡幅されてきれいになった道路沿いにあり、目立つ立て看板と派手なのぼりで気になっていたお店。「鳥長三代」と書いてあるがなに屋さんなのかとても気になっていたところだった。
お邪魔すると社長のさんが迎えてくれました。
若い社長さんで先代から受け継いだ鶏肉加工工場で工場に直売所を併設しているお店をはじめたとのこと。最初は手探りだったが、工場直営ということもあり昨今の食品の安全性から「国産」「工場直売」でお客さんが増えたとのこと。
現在は商品をビニール袋に入れて渡しているが箱に入っているほうが消費者にとってもいいのではないかと考えていた。
衛生上はビニール袋に入っているので良いのだが、鶏肉から出る油と水分が袋の中で結露し再び吸い込んでしまう。
消費者の食卓に登る頃には表面のパリパリ感がなくなっていることも気になっている、とのことだった。
もとは食肉を流通に卸ろすところから入っているので販売方法が独特で、基本は重さ×量の量り売り。
鳥の丸焼きでもそう。消費者にとっては明朗会計であっちの鳥の方が大きいとか、私の小さい・・・・といった不公平は生まれない。
しかし、クリスマスになるとそれがとんでもない行列になってしまうとか・・・・
そこで、今年のクリスマスは量り売りから定額にして店頭の混雑解消、全面道路の渋滞緩和をしようと考えたとのことだった。
ケーキの箱・・・ですか?
デコレーション用のケーキの箱は正方形が主流。丸いデコレーションケーキを入れるのだから正方形になる。
長方形のものもあるが、既製のサイズではなかなか合わないなあ・・・と思いつつも見積もりを提示した。
同時に、完全オリジナルのパッケージを作った場合の見積もりと提案も行った。
クッキーなど焼き菓子に使われる紙製の食品トレーを底に入れるプランで、多少の油分や蒸気を吸い取る効果があるものだった。
「検討してまたご連絡いたします・・・・」
そろそろ肌寒くなってきたけど大丈夫かな・・・・
11月も後半に入り、年末年始用のパッケージの使用予定が決まり生産・出荷スケジュールが埋まってきた。
そういえば、鳥長さんのパッケージはいいのかな?と思い出した。
「社長、パッケージどうしますか?」
イメージはできつつあるが決めかねていることがある、ということで会社にお邪魔し打ち合わせをすることに。
スケジュール的には結構ぎりぎりになっちゃった・・・・
「クリスマス用作るよ。あとね・・・・他にも考えてることがあって」
他に考えてることとは、通年販売のから揚げやミートボールなどのメニューも箱入りで販売してゆきたい。
移動販売なども手がけたい。
パーティー用のチキンとしてテイクアウト商品を展開したい。
そのためにはパッケージに印刷を入れてブランディングをしてゆきたい・・・・
でも、パッケージの在庫がたくさんになってしまうのは困る。
ニーズは理解できました
クリスマスでのメイン商品「丸焼き」のサイズを確認し、他の商品を考慮してパッケージ形状の提案をしました。
パッケージは1種類。中のトレーにバリエーションを作り他の商品に展開する。
パッケージのイメージはあえてテーパー(上部の方が底部より広くなっている)とし、バケットのイメージを持つようなキャリー形状の箱。
見た目にも容量のわりに大きく見える。
この提案に社長さんも気に入ってくださり、デザインの打ち合わせになりました。
「このポイントカードのイメージで!」
あれっ、これ見たことある・・・・この、色で思い出した。たしか、デザイン会社Pさんで見た。
正確にいうと、このチキンの写真を夕方のお腹のすく頃に見て「おいしそうですね・・・」と言った記憶だった。
「社長、このポイントカードP社さんで作ってますか?」
「A広告社だよ、でもデザインは別の会社に打ち合わせに行ったなぁ」
「A社さんにデータの使用承諾取れませんか?そうするとデザインが早いんですけど・・・あと、P社にデータがあるか聞いてもらえませんか?」
あくまで、このポイントカードを製作したのはA広告社でP社にデータがあることが分かっていても勝手に使用することはできない。
施主さんに筋を通してもらうのが一番いい。
幸いA社の社長と鳥長の社長は非常に懇意にしておりデータの使用承諾をいただけた。しかも無料。
さっそくP社へ向かうと
「さっきA社の社長から連絡があったよ」と、わざわざ連絡まで入れてくれていた。
話が早い!
パッケージイメージを伝えて、CADデータを送る段取りをしてデザインの製作を開始してもらった。
仕様も決まり、印刷工程、表面加工工程と順調にすすみ、クリスマスには新しいパッケージ。
クリスマス前の週末が最初のピーク!そこから新パッケージのデビューです。
最後のまさか!
パッケージには型というものがあります。
(写真はイメージで本製品とは別の型です)
箱の形にプレスして型抜きするための刃型です。
到着予定日になっても型が入荷しない。
もともとギリギリの納期であったため、工場も型屋さんも大騒ぎ!
「間違いなく出荷しました!いま、S急便で荷物の追跡してもらってます」
大雪、年末、荷物の増量で荷物が行方不明になってしまった・・・
「あと、一日待ちましょう・・・・」
ほんとにギリギリだが、型がなくてはどうしようもない。
「S急便から連絡がありました。明日の朝、豊橋のセンターに到着です」
ほっとした。
「朝って何時?」
「5時ごろです。7時には仕分けが完了するそうですので・・・」
なんとか間に合う・・・・
翌朝、始業前にセンターに引取りに行った。
S急便の窓口の担当者は
「今降ろすしてる車にあると思いますので少々お待ちください」
待つこと30分、
「お客様のお荷物は載っていませんでした」
「えっ?」
「お客様の番号の荷物はこの車には載っていません。番号追跡では名古屋にあることになってますので・・・」
一瞬頭が真っ白になった。
かくかくしかじか・・・・
今回の型を製造している型屋さんの工場は石川県金沢市だった。
金沢の営業所からの連絡でこの日の朝5時到着のトラックに荷物が載っている旨を告げられたこと、製品を製造するのに必要なものであること。
などを説明し、何が何でもこの型が必要なことを力説した。
が、ないものはない。
S急便の担当者もこの件はどうしようもない旨を力説している。
「ここでお待ちいただいていつになるか分かりません。一度お帰りください。荷物が出てきましたら連絡します」
ある意味、この担当者さんもかわいそうだ。
彼に文句を言っている人は私のほかにもたくさんいるのだから・・・・・。
”今日出せば明日には届く”という便利な日本の物流事情が奇跡だったのかもしれない。
もう昼になる時間。型がなければパッケージは完成しない。時間的にももうリミット。
型屋さんに連絡を入れた
「型は出てきません。中京圏の物流は雪でパニックですよ。」
「そうみたいですね。金沢の営業所でも何ともならないみたいです。」
「悪いんだけど、I社に木型のデータ転送できるかな?」
「私も同じこと考えてました」
今回の木型製作の型屋さんと名古屋のI社は型の製造機械が同じでデータが共有できる。
そんな理由から日ごろから両社に取引があることを知っていた。
「急いで手配しますので連絡します」
・・・・・・10分後。
「今日中に型はできますが、運送便が麻痺ですよね・・・」
豊橋と名古屋は片道1時間。多少、道路事情が悪くても2時間あれば到着できる。
抜機のオペレーターも
「型さえ来れば今日の夜でも機械動かしますよ。明日の朝にお客さんに届けられますよ」と言っている。
「何時にできる?取りに行くから」
「今からですか?」
「そう。運送便がダメだし、そもそもクリスマスの箱待ってる人がいるんだよ!」
その日のうちに型を引取りに行き、オペレーターも型を待って機械を動かして加工した。
翌朝、ローチーフーズさんにパッケージを無事に納品できた。
途中のトラブルを社長さんに話していたので土曜日の朝に納品する旨を伝えた時にはいたく感謝された。
「無理を言って申し訳なかったね。しかも、間に合わせてくれてありがとう」
「社長、箱がなかったら売れませんからね・・・・」
新パッケージのクリスマスデビューに間に合った。
「ところで社長、うちの社員さんたちの注文数なんですが・・・」
商談途中から、デザインなどを見ていた弊社の社員が”チキンを注文したい”と、言っていたので社長にお願いしていた。
「あっ、そうそう、いくつ?」
「それが、20個程になってまして・・・」
一瞬、動きがとまった社長だったが
「大丈夫だよ、パッケージ間に合わせてくれたんだからうちもがんばるからね~」
そういって、クリスマスイブに間に合わせてもらうことになった。
クリスマスイブの午後、お店にうかがうとおびただしい数のチキンの丸焼きが新しいパッケージに入っていた。
お店中が香ばしいチキンの香り。
調理場を見ると、エプロン、長靴、手袋、マスクをした社長が調理をしていた。
「富田さん、ごめんね~。今日は時間がなくて・・・・」
「社長、ありがとうございました。パートさんたちが帰る前に私もこれ持って帰らないと~」
振り向くと次から次へとクリスマスチキンを注文したお客さんが来店してくる。
「社長!また来ますね~」
そう言って店を後にした。
国産のチキン、子供たちにも安心して食べさせることができる。
「すごーい、鳥が丸ごといるよ!」
「お父さん、おいしいね」
「こんどミートボール買ってきてね」
子供たちにはパッケージより中の鶏肉、そりゃそうだ!
今回も素敵なご縁をいただき感謝感謝です。
そして、日本の物流事情の危うさを勉強させていただきました。
ものすごい量の物流も在庫レスを実現し翌日にはどこでも届く・・・・という印象のある便利な現代日本です。
が、同時に自然災害には弱くちょっとしたことで脆弱性を露呈します。
それを支える人たちがいて成り立っていることも事実です。
何事にも余裕が必要ですね。
お客様紹介
株式会社ローチーフーズカンパニー
〒441-8113 愛知県豊橋市西幸町東脇20-2
鶏肉加工工場横に持ち帰り専門店 「鳥長三代」を併設
親鳥の加工にこだわったおいしい鶏肉を販売中。
ネットショップも運営しています。
詳しくはこちらから→http://www.roach-foods.com/